同じ生き物の毛なのだから、人間の髪を切るのとペットの毛を切るのに大きな差はないのではないかと思う人も多いでしょう。しかし、じつはトリミングシザーの方が摩耗が早く、すぐに切れにくくなるといわれています。本記事では、人間の美容用ハサミとトリミングシザーの違いについて紹介します。
トリミングシザーは人間の美容用ハサミとは異なる
機能や使い方に大きな違いはないものの、トリミングシザーは人間の美容用ハサミとは異なる特徴を持っています。以下に、その主な違いを紹介します。
刃線の種類
まず、トリミングシザーと人間の美容用ハサミの違いは、刃線の種類にあります。ペットブランドのシザーは主に直刃を使用し、毛が逃げにくい設計です。ペットの毛は人間の髪と異なり、しばしば複雑なテクスチャを持つため、逃げないようにするためです。
一方、美容師用のハサミは柳刃や笹刃が中心で、毛を逃しながら切るよう設計されています。これにより、美容師はより滑らかなカットを実現できます。
切れ味の違い
トリミングシザーと美容師用のハサミは切れ味も異なります。ペット用シザーは硬く、ザクザクとした切れ味が特徴です。ペットの毛は通常、太く濃密であるため、強力な切れ味が必要です。一方、美容師用シザーはより柔らかい切れ味を持っています。これにより、人間の髪の細かいディテールに対応でき、滑らかな仕上がりです。
ハンドルの形状とサイズ
さらに、ハンドルの形状とサイズも異なります。ペットブランドのシザーは、一般的に女性の手に合わせたデザインが多く、指穴が小さめです。これは、トリマーが長時間の作業中でも疲れにくくするための工夫です。対照的に、人間の美容師用のハサミは、男性の手にも合うような設計がなされています。
切れにくくなるのはハサミの材質が原因?
切れ味に差が出るポイントは、ハサミ本体の基本のつくりや刃付けだけではありません。使われている鋼材も切れ味に大きな影響を与えます。ハサミの材質に使われているのは、大きく分けてステンレス合金やコバルト合金、微粒子粉末鋼・ハイス鋼、純コバルト(コバルト含有量50%超)の4つです。よい鋼材ほど耐久性が高く、長持ちします。
美容師用のハサミは、人間の髪を切るために設計されており、その要件に合わせて高品質で耐久性のある鋼材が選ばれます。一方で、トリミングシザーはペットの毛を切るために使用されるため、動物の毛質や特性により適した鋼材が採用されます。これにより、切れ味の持続性や強度が異なり、トリマーのシザーの方が早く切れなくなる傾向です。
トリミングシザーは開閉が多い
人間の美容用ハサミと比べ、トリミングシザーは作業中の開閉が多いことも早く切れにくくなる要因といわれています。
開閉回数の多さによる摩耗
トリマーは犬の体表面積が広く、細かなディテールを求められるため、シザーを頻繁に開閉する必要があります。この開閉動作が頻繁に行われることにより、刃がほかの物に接触したり、摩擦が生じたりします。美容師が人間の頭髪をカットする際よりもトリマーの作業は細かく繰り返されるため、刃に摩耗が早く生じ、切れ味が低下する要因です。
ネジの緩み
トリマーは作業中にシザーの調整が必要な場合が多く、そのためにネジを緩めて使用することが一般的です。ネジを緩めて使うとカットの手首への負担は減るというメリットはありますが、刃こぼれしやすくなります。使いやすいよう、ある程度ネジを緩めることは間違いではありませんが、切れ味を悪くする原因になることも理解しておきましょう。
美容師用のハサミは歴史が長いため、品質が高いものが多くそろっています。そのため、一度ネジを調整したら比較的安定して使用できることが多いのです。品質の高いハサミはネジの緩みが少なく、刃こぼれが抑えられます。
摩耗が早いからこそお手入れが欠かせない
トリミングシザーは専門的な道具であり、品質が高いほど長期間使用できます。しかし、適切なお手入れをしなければ、切れ味が低下します。定期的な研ぎや調整によってシザーの寿命を延ばし、結果としてコストを削減できます。
また、トリミングシザーのお手入れには、正しい研ぎ方や調整方法を知ることが重要です。一般的な人間用シザーと異なり、ペットの毛に適した刃の角度や調整幅が必要だからです。自分で専門的な知識を身につけて対応するか、信頼できる専門家にお手入れを依頼しましょう。
まとめ
トリミングシザーと美容用ハサミの違いは、トリマーが毛が逃げないシザーを求めるのに対し、美容師は切られている感触を減らすために毛を逃がす設計のシザーを使用するという異なる作業要件によるものです。それぞれの作業環境や使用用途に最適化されたデザインが施されており、専門性を持っています。
これらの違いを理解し、より効果的で適切なツールを選べば、ペットやクライアントにとって最高のケアを提供できます。また、トリマー用シザーは耐久性の高い素材が選ばれることが多いものの、開閉回数が多く摩耗しやすいものです。そのため、定期的な確認とお手入れが大切です。