トリマーは、ペットの健康や美容をケアする職業です。ペットと暮らしている方や動物好きの方にとっては憧れの職業なのではないでしょうか。
しかし、トリマーはお給料が安いというネガティブな評判を耳にしたことのある方もいるのではないでしょうか。現在、トリマー業界は長期的な人手不足を解決するために、待遇面は改善が進められています。
そこで、今回はトリマーのお給料や気になるポイントについて、徹底的に調査しました。
トリマーのお給料はどのくらい?
実際にトリマーとして働く方のお給料はいくらぐらいなのでしょうか。平均年収や初任給、ボーナスについて詳しく解説します。
平均年収・月収
複数の求人サイトのデータによると、トリマーの全国平均月収は19万円~23万円ほどとされています。年収に換算すると、275万円~271万円ほどです。
ただし、働くエリアによって多少年収は前後します。関東エリアの場合は平均年収292万円、近畿エリアの場合は平均年収308万円とされています。
トリマーの平均年収が高い地域は、東京都を中心として、神奈川県や大阪府、愛知県などの都市部が挙げられます。これらの地域の平均年収は308万円~392万円なので、全国平均と比較すると10%近く高いことが分かります。
一方で、トリマーの年収が低い地域は、沖縄県・宮崎県・佐賀県・秋田県などであり、平均年収は224万円です。首都圏と比較すると、年収が低いことがわかります。
また、勤務形態によっても給与は異なります。正社員の場合は平均月収26万円ですが、アルバイトの場合は時給750~1,200円、独立した場合は450~1,500万円など、大きく違いがあります。
なお、平均年収が高い地域は求人数も多い傾向にあるため、トリマーとして働く際に好条件で採用される可能性が高まります。
初任給はいくらくらい?
トリマーの初任給は、平均で15万円前後とされています。総支給額が15万円の場合、手取りは12万円ほどとなります。ボーナスがない場合には、年収が180万円ほどなので、経済的には厳しいと言えます。
ただし、地域や店舗によっては平均よりも低いこともあるため、求人情報を比較して就職先を検討するようにしましょう。
トリマーはペット業界でも人気の職種ですが、とくに女性からの人気が高い傾向にあります。就労者の9割以上が女性とも言われています。
しかし、男性でもトリマーを目指す方は少なくありません。なお、男性だからと言って不利というわけでもなく、初任給が性別によって変わるということはありません。
ただし、トリマーの勤務先は小規模なお店が多いため、昇給やボーナスには期待できないこともあります。男性にとっては収入面の物足りなさにがっかりしてしまうかもしれません。
就職先を選ぶ際には、給与はもちろん、福利厚生やキャリアアップなどの面も踏まえて総合的に判断することが重要です。
ボーナスはあるの?
ボーナスは、夏と冬の2回支給されることが一般的ですが、トリミングサロンやペットサロンの場合は異なる可能性があります。トリミングサロンやペットサロンでは、夏のお盆シーズンや冬の年末年始が繁忙期なので、繁忙期明けに支給されるケースが少なくありません。
支給のタイミングは給与と同じように固定された日付が決まっているわけではないので、注意しましょう。また、ボーナスも保険費用などが天引きされるので、総支給額がそのまま手元に入るわけではありません。
なお、トリミング業界においては、大手チェーン店であっても長年ボーナスの支給が行われていないという実情がありました。しかし、近年は深刻な人材不足を受けて、大小問わずペットショップや動物病院などでもボーナス制度を導入しています。
ただし、ボーナスにはほとんどの場合、「支給要件」が設けられているので、注意しましょう。たとえば、「勤務開始から〇年経過していること」「正社員であること」などの条件が一般的です。
就職や転職を検討している方は、ボーナス面についてもしっかり確認しておきましょう。
勤務先によって平均年収は違う?
トリマーは、勤務先によって求められるスキルが異なり、平均年収も多少上下します。それぞれの平均年収を紹介します。
ペットショップ
ペットショップには、個人規模の小さな店舗から大手チェーン店までさまざまなお店があります。売りに出されている犬や猫のお世話はもちろん、販売店としてのスキルも求められます。
ペットショップで勤務するトリマーの平均月収は18~22万円とされており、平均年収は290万円ほどです。ただし、勤務エリアによっては、年収で10~30万円ほど低い場合もあります。
また、ペットショップの中には、ペット向けのおもちゃや餌などの商品販売ノルマが課されていることもあるため、労働条件についてはよくチェックしておきましょう。
ペットサロン
近年、ペットサロンは増加傾向にあります。ペットサロンとは、ペットのトリミングを専門的に行うお店です。
ペットの美容をメイン業務としているので、トリマーとしてのスキルを最も発揮できる勤務先と言えるでしょう。ペットサロンで働くトリマーの平均月収は20万円前後であり、平均年収は260万円です。
ペットホテル
ペットホテルとは、ペットの飼い主が旅行などで家を空ける間、一時的に預けることのできるペット専用ホテルのことです。近年、ペットサロンがペットホテルとしてのサービスを担うケースが増えてきています。
ペットホテルで勤務するトリマーの平均月収は22万円前後であり、平均年収は280万円ほどです。
動物病院
動物病院では、獣医がペットの病気や怪我について治療を行っています。中には、病気や怪我をする前に兆候をチェックするサービスを行っているところもあり、トリマーがその役割を担うことがあります。
キレイに整える施術というよりは、皮膚トラブルなどの予防や健康面での管理が優先されるので、ペットショップなどとは求められるスキルが異なります。動物病院に勤務するトリマーの平均月収は18~22万円となっており、平均年収は290万円ほどです。
また、動物病院では手当が充実していることが多いのが特徴的です。たとえば、トリマー自身が飼っているペットにワクチンを無料で打ってくれるなどの福利厚生を提供している病院もあります。
手当が充実している分、安心して働くことができます。
トリマーとして就職する際に注意するポイント!
トリマーとして就職や転職する際に、注意すべきポイントを2つ紹介します。
福利厚生(有給/賞与の有無)
一昔前までは給与が低いと言われていたトリマーのお仕事ですが、近年は給与の改善とともに、福利厚生を充実させている勤務先が増えてきています。福利厚生制度が充実している勤務先であれば、長く働き続けることができます。
福利厚生の例としては、家賃補助や引っ越し手当、家族手当、ペット飼育費用の補助、資格取得費用の負担、用品購入時の社員割引などが挙げられます。中には、社宅を用意しているところもあります。
トリミング業界では人手不足解消を目指して、給与・ボーナスだけでなく、福利厚生としてさまざまな取り組みが行われています。
とくに、家賃補助や社宅制度などは日々の生活に直結する部分なので、支給額があいまいなボーナスよりも人気を集めています。
トリマーとして就職や転職をする際には、給与面はもちろんのことですが、福利厚生にも目を向けてみましょう。自身の生活や将来の目標と照らし合わせて、最適な職場選びが重要です。
ノルマについて
ペットサロンやペットショップによっては、トリマーにノルマが課されているケースがあります。たとえば、1日に担当するカット数やペット用品などの販売数などです。
目標額や数が定められているショップも多いので、就職する際には注意が必要です。ノルマに追われた生活は、精神的負担が大きくのしかかります。
しかしながら、ノルマの有無については、就職するまで不透明な部分も多いのが実情です。希望している店舗でトリマーとして勤めていた方が身近にいる場合には、ノルマについて詳しく聞くことをおすすめします。
また、大手チェーン店などの場合、勤めていた社員による口コミがインターネット上に掲載されていることがあります。元社員の口コミなども参考にして、就職先を見つけると良いでしょう。
独立した場合の給料は?
トリマーとして独立した場合の給料や独立するための方法について詳しく解説します。
平均年収・月収
トリマーとして独立し、店舗を開業した場合の平均年収は450万円ほどです。月収に換算すると、35万円前後となります。
ただし、独立したトリマーのお給料は、その方のスキルや年収によっても大きく前後します。中には、年収が1,000万円~1,500万円ほど稼ぐトリマーもいます。
トリマーとして独立したものの、収入が安定しないという方も少なくありません。繁忙期には月収が30万円以上であっても、それ以外の月は10万円前後というケースもあります。
厳しい業界ではありますが、スキルと実績がある方であれば正社員以上の年収も夢ではありません。また、トリマーとして独立するとなれば、店舗を借りたり、自宅の一部を改装したり、と生活スタイルに合わせて自由に開業できる点も魅力的です。
トリマーとしての技術力を顧客にアピールするためには、トリマー資格の取得が有効です。資格を取得することで技術レベルが可視化されるので、常連客獲得にもつながります。
独立するために取得しておきたい資格としては、まず「JKC公認トリマー」が挙げられます。JKC公認トリマーとは、ペット犬の血統書などを発行している「ジャパンケネルクラブ」が発行している資格です。
ペット業界において高い知名度を誇るため、確かな技術力を証明できます。JKC公認トリマーには、C級から師範まで5つのランクが用意されています。
独立・開業を目指すのであれば、最低でもB級以上を取得することをおすすめします。ただし、B級を取得するためには、C級を取得することが前提条件なので、トリマーとしての経験がまだない方は、まずはC級から取得を目指すと良いでしょう。
トリマーとして独立・開業するには?
トリマーとして独立・開業する方法はいくつかあります。そのうちの一つが、フリーランスとして独立する方法です。
フリーランスのトリマーとして働くためには、確かな技術力と安定して指名をもらえるほどの信頼性が必要です。大切なペットを預かっているという意識を持ち、些細な変化も見逃さないほどのきめ細やかな対応が求められます。
また、トリミング技術はもちろんのことですが、ペットに関する深い知識と経験を身につけることで、幅広いニーズに対応できるようになります。たとえば、躾やダイエットなどの管理面について実績をお持ちの方は、アドバイザーとしても活躍できることでしょう。
フリーランスのトリマーの場合、基本的には一人で作業を行います。作業効率や時間単価を踏まえたうえで、サービス内容を検討しましょう。
トリミングには、最低限シャンプーやカット、ドライヤーの作業が含まれるので、時間も工程もかかります。一方で、耳掃除や爪切り、健康チェックなどのグルーミングのみを提供する場合は、トリミングよりも作業時間や工程が短縮できるので、フリーランスとして始めやすいでしょう。
フリーランスのトリマーには、大きく分けて「訪問型サービス」と「店舗型サービス」の2種類があります。店舗を構えず、一人でトリミングサービスを行う場合には、飼い主の自宅に訪問する訪問型サービスが当てはまります。
テナント料や光熱費などの経費が必要ないため、店舗型よりもコストを抑えて事業を始められます。しかし、作業環境は毎回異なるので、勝手が違うことに慣れないこともあるかもしれません。
また、対応エリアについても検討が必要です。自分が対応できる範囲を把握しておきましょう。
さらに、訪問型サービスは、固定客をつかむまで収入が安定しづらいというデメリットがあります。集客のためには広告費が必要になる可能性もあります。
一方で、店舗型サービスの場合は、ペットショップやペットサロンなどと契約することになります。予約状況に合わせて店舗を訪問し、トリミングを担当します。
ペットショップやペットサロンでフリーランスとして働くのであれば、広告費が必要ありません。ショップ自体の集客力を利用できるので、コストパフォーマンスが高い働き方を実現できます。
なお、フリーランスの方は、あくまでも雇用ではなく業務委託での就労なので、給料や勤務時間について交渉する必要があります。複数店舗と掛け持ちで契約する場合には、予約がバッティングしないようにスケジュール管理が重要です。
さらに、ペットサロンやペットショップを開業する場合には、トリマーとしての技術力に加えて、店舗経営のスキルやノウハウを身につけなければいけません。いくらトリミングスキルが優れていても、経営に関する知識がなければ、店舗を維持することは難しいでしょう。
具体的には、開業についての予算や事業内容を明確にして、資金調達を行います。店舗の規模や立地などによって、開業に必要な予算は大きく異なります。
また、銀行に融資を依頼する場合には、事業計画書の作成が求められます。無理のない経営を目指して、計画を立てましょう。
また、ペットサロンはどこに出店するかという点も大切です。たとえば、ビルや商業施設にテナントとして参入したり、自宅の一部を作業部屋として改装したりといった店舗形態があります。
店舗の立地は集客に大きく影響する部分なので、競合などの市場調査を行い、効率的に集客が見込める立地を選ぶようにしましょう。また、開業資金とも照らし合わせながら、検討しましょう。
トリミングサロンやペットショップを開業する場合、「第一種動物取扱業」の登録申請が必要となります。なお、申請の際には、事業所ごとに専属の「動物取扱責任者」を選任する必要があります。
トリミング事業のみを行う場合には、「保管」に事業として登録すれば良いですが、付随してそのほかのサービスを展開する場合には、事業内容に合わせて申請する必要があります。たとえば、ペットショップを併設する場合には、「販売」の項目でも登録が必要です。
独立資金の調達や必要書類の申請などの開業準備を済ませた後は、店舗経営のための集客方法を学ぶと良いでしょう。店舗経営を成功させるためには、他店との差別化を図ることが重要です。
トリミングだけでなく、ドッグカフェやペットホテルなどの施設を併設するのも一つの手段です。独自の強みや特色を全面にアピールしましょう。
まとめ
今回は、トリマーのお給料について気になるポイントを詳しく解説しました。トリマーのお仕事はペット業界でも人気を集めています。
しかし、お給料については期待できないという評判も少なくありません。実際に、以前までは年収やボーナスが低いことで有名でしたが、近年は慢性的な人手不足を解消するために、給与やボーナスの支給、福利厚生などに力を入れている職場も増えてきています。
トリマーは、勤務形態や勤務先によっても平均年収が大きく変化します。また、ペットサロンや動物病院などでスキルを磨くことで、フリーランスとして独立する手段もあります。
本記事が参考になれば幸いです。